松江地方裁判所今市支部 事件番号不詳 判決
本店
島根県簸川郡荒木村大字修理免七四四番地
山陰ベニヤ株式会社
右代表者
取締役 布谷久五郞
本籍
東京都江東区南砂町六丁目二三四番地
住居
同都杉並区阿佐谷六丁目二三三番地
会社重役
布谷久五郞
当四十六年
本籍
北海道北見市大通東十二丁目二番地ノ二
住居
島根県簸川郡荒木村大字修理免七四四番地
会社重役
太田定雄
当四十六年
右の者に対する法人税法違反被告事件について検察官森井英法立ちあいのもとに審理をとげ次の通り判決をする。
主文
被告人山陰ベニヤ株式会社を
第一事実について罰金五十万円に
第二事実について罰金百万円に
第三事実について罰金百万円に
処する
被告人布谷久五郞同太田定雄をそれぞれ懲役八月に処する
但し本裁判確定の日より二年間それぞれ右刑の執行を猶予する
訴訟費用は全部被告人等の連帶負担とする
理由
被告人山陰ベニヤ株式会社は島根県簸川郡荒木村大字修理免七四四番地でベニヤ板の製造販売を業としておるものであり、被告人布谷久五郞同太田定雄は同会社の代表取締役であるが被告人布谷、太田の両人は共謀して同会社の業務に関し
第一、昭和二十二年十二月八日出雲税務署にたいし同会社の昭和二十二年五月七日より同年九月三十日までの事業年度の法人所得金額確定申告をなすにあたり課税所得額二十八万七千二百十五円(税額十八万二千六百八十九円七十銭)と申告し、同税務署において課税所得額七十二万八千二百六拾円との更正決定をなしたるため之に対する税金四十六万九千三百九十四円二十銭を納付したのである。
しかし同会社に於ては同年度中に右更正決定による所得額のほかになお所得金五十八万七千三十九円五十三銭があつたのにかかわらず、これを仮受金返済として虚僞の計理をしてその申告をなさずこれにたいする法人税額金三十八万一千五百七十五円六十八銭の課税を免れ
第二、昭和二十三年六月十五日前記税務署にたいし同会社の昭和二十二年十月一日より同二十三年三月三十一日までの法人所得額中間申告をなすにあたり課税所得額九万九百十五円(税額五万四千四百三十八円五十五銭)と申告したのである
しかし同期間に於ては右申告所得額のほかになお金百七万六千八百四十七円二十七銭の所得金があつたのにかかわらず、その一部を仮受金の返済として虚僞の計理をなし、他の一部を記帳せずしてこれが申告をなさずこれにたいする法人税差額金八十九万九千四百三十六円九十一銭の課税を免れ
第三、昭和二十三年十二月二十日前記税務署にたいし昭和二十二年十月一日より同二十三年九月三十日までの事業年度の法人所得金額の確定申告をなすにあたり、課税所得額三十四万六千七百二十五円(税額十五万六千七百六十九円)と申告したのである。
しかし同年度中に於ては右申告所得額のほかになお金二百三十万三千二百三十五円〇一銭の所得金があつたのにかかわらず、その一部を仮受返済とし他を前受金の留保中なるものとしてそれぞれ虚僞の計理をしてその申告をなさずこれにたいする法人税差額金八十万四千八百五十六円五十三銭の課税を免れたものである(末尾計算関係書参照)
(証拠説明前略)
なお被告人等は検事の起訴事実中
(一) 第一乃至第三事実の期間中商品の販売についてそれぞれ経費を要しており、右経費は少くとも商品の売上代金にたいし7%を要しておる。しかしこの経費は枠外取引について売上金を仮受金などとして記帳した関係上大部分その記帳をなさず僅かにその枠内分の経費の一部のみを記帳して計理したものであるから、その記帳しておらぬ部分は脱税として認定せらるべきものではない。
(二) 布谷久五郞にたいし仮受金返済等と記帳したものはもと同人が個人として営業しておつた一切の資産負債を総括して被告会社が引受けたのであるが、会社設立当時その引受け金額を支拂う資力なく、従つて同人にたいしてその引受金額支拂の為めに真実支拂いをしたものでこれまた脱税として認定せらるべきものでない。
(三) 第二期事業年度に於て機械代金、接着剤代金の支拂をしておるこれは真実支拂をしておるが記帳しておらぬこの分も亦脱税に認定せらるべきものではない。
(四) 第二期前半期に於て桑原大造等に販売した合板等五貨車分の代金は未收であつた為め、該代金受領の上記帳する考えでその記帳をしなかつたもので脱税の意思はなかつた。
(五) 第二期の決算に於て仮受金合計百五十七万八千四百十三円三十銭を後期繰金越として計上したものは、次の事業年度に於て正式に売上金として所得の申告をする考えであつたものであるから、脱税の意思はなかつたとそれぞれ弁解するのでこれらの点について按ずるに、
(一) の点については証人上代好吉同又賀淸一証人菊池勝市の証言によつて被告人等の弁解はこれを至当なりと窺い知ることができる、よつて起訴せられたる全期間を通じそれぞれその年度の経売上高の7%を販売経費と認定しその中から被告人会社から所得申告の基礎とした記帳の販売経費、すなわち枠内の販売経費として計上せられたと認める交際費、旅費、交通費、通信費、販売諸掛費、雑費を差し引きその残部を起訴の所謂逋脱所得額中から控除した、
(二) の点については被告人布谷、太田の当裁判所に於ける供述と証人菊池勝市の証言証第十五号乃至第十七号証第二十二号と証第一号(本件記録の末尾に添付してある淸水税務署の布谷久五郞納入名義の納税領收書)によれば被告人等の弁解は一部理由あると認める、よつて右布谷にたいする支拂金二十一万四千十一円九十七銭と資産買増代金中被告会社が淸水税務署に現金支拂うた金三十九万二千五十一円五十銭だけは起訴第二事実の逋脱額の中から控除することにした。
(三) の点についてその接着剤代支拂部分については右支拂の事実は検査官に於ても爭いのないことであり、其の品物が被告会社の営業上使用せられる消耗品でありと思料するから、他にこれを認むべき証拠なき以上これを所得額中に算入すべきものでないと認めた。しかし機械代金の支拂については右機械がやはり資産として現存する以上これを所謂逋脱所得額の一部として認定すべきものと思料する。
(四)(五) の点の主張は被告らの弁解は理由ないものとして採用せぬ。
法律にてらすと被告会社の第一、第二、第三所為はともに昭和二十二年法律第二十八号法人税法第四十八條第五十一條にあたり、第二、第三の所為は更に昭和二十二年法律第百四十二号第二條に、また第三の所為はなお昭和二十三年法律第百七号第二條にあたるのでその定めてある刑のうち罰金刑を選択しその科刑範囲内でそれぞれ主文の通り処分することに定めた。
次に被告人布谷久五郞、同太田定雄の第一乃至第三の所為は共に前記法人税法第四十八條昭和二十二年法第百四十二号第二條にあたり共犯であるから刑法第六十條によるべきものである、よつてその定めてある刑のうち懲役刑を選択して所断することにしたが、右布谷、太田両被告人の所為は併合罪であるから刑法第四十七條第十條によつてその最も重いと認める第三の罪の刑に併合罪の加重をしてその刑期の範囲内で布谷、太田両被告人をいづれも懲役八月に処すべきものとする。しかし右両人については双方ともその情状刑の執行を猶予するを相当と思料するから刑法第二十五條によつて本裁判確定の日から二年間その執行を猶予することにした。
訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一條第八十二條に従つて全部被告人に連帶負担をなさしむべく、
仍て主文の通り判決した。
(裁判官 安部正)
計算関係
第一期分(昭和二十二年五月七日より 同年九月三十日まで)確定申告
申告課税所得額 二八七、二一五円、〇〇 税額 一八二、六八九円、七〇
更正所得額 七二八、二六〇、〇〇 同 四六九、三九四、二〇
逋脱所得額 五八七、〇三九、五三
総所得額 一、三一五、二九九、五三
右法人税総額 八五〇、九六九、八八
内訳
四六〇、三五四円、八三 普通所得税 総所得の 35%
七四五、八〇 超過所得税 資本の一割を超ゆるもの 10%
一、四九一、六〇 同 〃 二割を超ゆるもの 20%
三八七、八七七、六五 同 〃 三割を超ゆるもの 30%
五〇〇、〇〇 資本税
更正による納額四六九、三九四円二〇
差引脱税額 三八一、五七五、六八
第二期中間分(昭和二十二年十月一日より 昭和二十三年三月三十一日まで)申告
申告課税所得額 九〇、九一五円、〇〇 税額 五四、四三八円、五五
逋脱所得額 一〇七六、八四七、二七
総所得額 一一六七、七六二、二七
右法人税総額 九五三、八七五、四六
内訳
四〇八、七一六円、七九 普通所得税 総所得額の 35%
八九五、〇〇 超過所得税 資本の一割を超ゆるもの 10%
一、七九〇、〇〇 同 〃 二割を超ゆるもの 20%
三四一、九七三、〇〇 同 〃 三割を超ゆるもの 30%
五〇〇、〇〇 資本税
申告納税額 五四、四三八円五五
差引脱税額 八九九、四三六、九一
第二期分(昭和二十二年十月一日より 昭和二十三年九月三十日まで)確定申告
申告課税所得額 三四六、七二五円、〇〇
逋脱所得額 二三〇三、二三五、〇一
中間申告 一一六七、七六二、二七
第一期否認所得額 四三三、八七六円
差引純所得額 三三八四、八四六、二八 三、八一八、六九二、〇〇
右法人税総額 一七八一、一八三、九四
内訳
一一八四、六九七円、一九 普通所得税 純所得額の 35%
一五、三三〇、〇〇 超過所得税 資本の三割を超ゆるもの 10%
五七、四八七、五〇 同 〃 五割を超ゆるもの 15%
五二三、六六九、二五 同 〃 十割を超ゆるもの 20%
確定申告納付額 七六、八九〇円五〇
中間税額 三〇〇、八三一、九〇
差引脱税額 八〇四、八五六、五三